TOP琵琶湖・淀川こども水質保全活動助成について活動レポート05.「園部川(淀川・桂川流域)の水質保全活動」

05.「園部川(淀川・桂川流域)の水質保全活動」 京都府立園部高等学校 |2014.10.16
 環境教育に積極的に取り組んでいる、京都府立園部高等学校。今秋、理科の課題研究の一環で1年の生徒たちが淀川流域の水環境について学びました。

 園部高等学校では毎年、中高一貫クラスの1年生は、課題研究を行います。生徒たちは、各専門分野のスペシャリストの講演を聴いた後、研究に取り組むテーマを決めていきます。
 今回、水環境について研究を始めた8人は、京都学園大学水環境研究室の辻村茂男准教授の講演に感銘を受け、水環境についてもっと知識を深めたいとこのテーマを選びました。
 この課題研究では、園部高校で教鞭を取る理科の田中良興先生の指導のもと、生徒たち自ら研究の進め方を考えていきます。研究に行き詰ったときは、辻村先生から調査方法や調査結果の検証などについてアドバイスをしていただきます。

 田中先生は、環境省認定の環境カウンセラーでもあり、常から環境教育に大変力を入れておられる指導者で、園部高校に赴任して以来、3年生の理科授業に水質調査を取り入れ、園部川の水質調査を指導されてきました。3年間の水質調査の方法や結果は、今回の課題研究の参考にもなり、より高度な研究成果が期待できます。

園部城の城門を利用した校門。歴史を感じます。


京都学園大学水環境研究室の辻村茂男准教授の講演


3年生の水質調査

 さて、調査計画も決まり8人の生徒は、2チームに分かれ、園部高校付近を流れる園部川と、亀岡市を流れる年谷川について調べることになりました。
 今回、10月16日の1回目の調査におじゃましました。

園部川チーム
 園部川は、京都府南丹市園部町、八木町を流れる、桂川の支流です。
 園部川チーム(和辻有美さん、彼末よしのさん、高島唯さん、木村美野さん)が調査します。
 子供のころから親しんでいる園部川の水質は、どうなっているのかという疑問を中心に調査に挑みます。 
 調査の前には南丹市役所へ出向き、園部川の状況(下水処理場や浄水場など)を教えてもらい、準備OKです。
 COD、アンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、りん酸態りんの5種類の水質検査と、川に棲む水生生物の調査を行います。

 田中先生は、「パックテストとともに水生生物を調べることにより、より確かな水の状況を知ることができます。寒くなり水生生物が少なくなっていますが、ここでは水質階級Ⅱ(ややきれいな水)ぐらいの生物が多くいます。上流より水がきれいなのは、砂床が砂地で微生物による浄化作用があるのかもしれませんね」と話してくれました。


水や水生生物を採取し、記録を取っていきます。


山々に囲まれた園部川


記録と調査に分かれます。


パックテストと色見本を見比べます。スマホで撮影し記録がいまどきです。
 リーダーの木村さんは、「辻村先生の講演会で、水質汚染や琵琶湖に外来種の水草が増えているなど水環境に多くの課題があることを知りました。自分たちにとって身近な川である園部川はどうなっているのだろうと思いました」と調査を始めたきっかけを話してくれました。
 さらに「園部川(上流域)→桂川(中流域)→淀川(下流域)とつながっているけど、上流に住むものとして、下流の大阪の人達の生活のことが気になり始めたのです」と話してくれました。
 水質調査を終えた園部川チームは、先輩の調査では園部町内の川のCOD値が8以上を指していたのを知り、「園部川最下流のCOD値が0~1で、きれいな水で下流にバトンタッチできている」「道路から見たら、川には生物がいそうもなかったのに、たくさん生物がいて驚いた」などと話していました。

年谷川チーム
 もう一つの調査は年谷川です。年谷川チーム(勝部圭さん、吉村斗亜さん、前田凌さん、大石耕作さん)が担当します。年谷川は、京都府亀岡市を流れる、桂川の支流。調査地点は、園部高校から南東へ約20キロの所です。
 リーダーの勝部君が、子どもの頃からなれ親しんだ自宅近くの川で、今回、ぜひ調査をしたいと場所を決めました。
 こちらのチームは、BOD、COD、アンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、りん酸態りんの6種類の水質調査と、川に棲む水生生物の調査を行います。
 年谷川の中流には、ややきれいなところに棲んでいる水生生物も見つけることができ、比較的きれいだということがわかりました。


水生生物をたくさん採集しました。

 勝部君は、「辻村先生の講演で、このあたりでは、浄化センターの処理排水口からの水が9割を占めると聞きました。汚泥などの影響で生息する生物種が変化する仮説をたてて、調査を進めたいと思います」と話します。
 また、「下流・上流も調査してみたい。これからは毎年の水質を調査・記録して、その経過を残しておくことが大切だと思います」と調査の意義についても熱く語ってくれました。 



年谷川での調査は日暮れまで続きました。


調査をメモしたノート。


年谷川について熱心に語る勝部君㊨の夢は、昆虫生態学者です。

課題研究発表会
 調査を進めた生徒たちは、12月18日に「園部高等学校SPP課題研究発表会」で調査結果をまとめ発表します。
 生徒達が、今回の大学との連携による本格的な水質調査で、地域を流れる川や水環境についての問題点などどこまで深く探ることができたか、結果報告を楽しみにしています。

 おじゃましたのはたった1日でしたが、生徒達が専門家から講義を受け、大きな視点から見つけ出した課題を、自分たちの地域のなかで、自ら調査・解明しようとする取り組みに、身近な生活環境を守りながら地球全体の環境を考えていくという、環境保全活動の基本モデルを見させてもらった気がしました。


団体名|京都府立園部高等学校(きょうとふりつそのべこうとうがっこう・京都府南丹市)
テーマ|「園部川(淀川・桂川流域)の水質保全活動」
目 的|淀川上流にあたる園部川の水質保全のための調査・啓発活動
概 要|淀川・桂川流域の園部川における水質調査を地元大学である京都学園大学の水環境研究室と連携しながら実施し、分析する。調査結果は地域の水質保全活動に結びつけてもらえるような形で、地域に公表する予定。
園部川調査地点付近
年谷川調査地点付近

琵琶湖・淀川こども水質保全活動助成・TOPへもどる

 


copyright c Lake Biwa-Yodo River Water Quality Preservation Organization all rights reserved.