TOP琵琶湖・淀川こども水質保全活動助成について活動レポート04.「水生生物を指標とした淀川水系の水質調査活動」

04.「水生生物を指標とした淀川水系の水質調査活動」関西ナショナル・トラスト協会 | 2014.8.30・9.13
 関西地域の自然や歴史・文化的環境のための啓発活動を行っている、NPO法人関西ナショナル・トラスト協会は、2014年度、高校生を対象に「水生生物を指標とした淀川水系の水質調査」を行いました。
 この事業は、大阪市内の淀川河口域から枚方・楠葉エリア、さらに上流の京都府域の3川(宇治川・木津川・桂川)での調査を通じ、高校生の皆さんが淀川水系の水質環境や河川生態系の特性について正しく理解することを目的としています。
 今回、大阪市立東高等学校の「理科学研究会」の7名の生徒たちが調査に参加しました。
 そして、指導者として大阪市立城陽中学校の教諭で国土交通省の淀川環境委員会水域環境部会長を務める河合典彦先生に調査活動全体をサポートしていただきました。
 大阪市出身の河合先生は、子どもの頃から淀川に慣れ親しみ、そこにすむ魚や生きものに魅せられてきました。現在も中学校で理科を教えながら、淀川の研究や環境保全に力を入れておられる、まさに淀川を知り尽くした方です。
 7月13日のオリエンテーションを皮切りに、27日の十三干潟での調査、8月30日の淀川資料館での講義、9月13日の、楠葉の河川敷(大阪府枚方市楠葉)、桂川下流・宮前橋付近(京都市伏見区淀)、桂川上流・渡月橋(京都市西京区嵐山)での調査、9月28日の宇治川・木津川での調査を終了し、11月9日には、成果のまとめに向けたミーティングを開きました。
 この内、8月30日と9月13日の活動におじゃましました。

淀川資料館で中・上流域の姿を学ぶ
 8月30日の淀川資料館では、河合先生が、淀川の流域面積や水位などのデータ、生息する固有種などの生物多様性、巨椋池、淀川修築工事によりできた特有の水環境「ワンド」※など、淀川中・上流域の姿について詳しく説明してくれました。


淀川資料館の展示室

 当初は、講義のあと水質調査も予定していましたが、豪雨の影響で淀川の水位が高い状態が続いていたため残念ながら延期としました。


河合先生の淀川資料館での講義


淀川資料館のある枚方大橋付近

くずはのワンドを調べよう
 9月13日の楠葉の河川敷と桂川の調査は晴天に恵まれ、参加した生徒7名と河合先生、関西ナショナル・トラスト協会の岡村さん、淀川資料館の職員の方とともに、青空のもとフィールドワークを行いました。
 楠葉では、淀川に7か所あるワンドの最上流部にある「楠葉ワンド」の周辺へ向かいます。
 河川敷を利用して作られたゴルフ場を横切り、1キロほど歩いて、草を分け入るとやっと楠葉の河川敷に到着です。ワンドでは、釣りを楽しむ人達も見かけました。
 淀川資料館の職員の方に「再生された楠葉ワンド」について説明を受け、その傍を通って本流の水辺まで近づきました。


のんびり釣りを楽しむ人が見られました

 このあたりの淀川本流では、実際に水が流れている川幅が200メートルほどで一番狭く、対岸の高槻市にある堤防がすぐ近くに感じられました。 
 生徒たちは、河合先生の指導のもと、天候、水温、気温、水深、流速、水の透視度などを計測し記録します。
 その後、水中の石をひっくり返したりして、水生生物の採集を行いました。
 川原の石には、その表面に生えた藻類をアユが食べたあとの「アユのはみあと」がたくさん見られました。
 また、河合先生によると、少し探せば「くらわんか茶碗」※2や「須恵器」※3なども見つかるそうです。文化的な遺物「ワンド」とともに淀川と人との関わり、歴史を感じます。


これはなんですか?

 しばらく続いた淀川の増水の影響か捕まえた生物は少な目でしたが、オオシマトビケラやコガタシマトビケラが見つかりました。これらの指標生物から、このあたりは、水質階級Ⅱの「ややきれいな水」と判定されました。また、わずかながら水質階級Ⅰの指標生物であるカワゲラ類やナガレトビケラ類も見つかりました。



ゴルフ場を横切り、河川敷へと向かいます


淀川資料館の職員さんから「樟葉ワンド」の説明を受けます


気温・水温・流速を計ります


透視度も計ります


獲れた水生生物についてみんなで報告します

桂川下流・宮前橋付近
 その後、河原で昼食をとったあと、次の調査地点の桂川下流・宮前橋付近に向かいます。
 ここには、少し上流に京都市の鳥羽水環境保全センター(下水処理場)があります。他の地点との水質の違いを調べるため同じように調査を進めます。


宮前橋周辺で水生生物を探します


楠葉と違う生物はいたでしょうか?

桂川中流・渡月橋
 最後に桂川の観光地「嵐山」で有名な渡月橋付近へ移動し、同様に調査を進めました。この地点は、宮前橋よりも上流部にあたり、水質も良くさらに多様な生物が見られました。
 河合先生は、あまりお目にかかれないきれいな水にしか棲まない「アカザ」や「カジカ」などの魚類も捕獲してくれました。さらに、オオサンショウウオの死骸が流れついているなど、興味深い調査となりました。

嵐山の渡月橋から少し下流の地点で調査です


渡月橋では、ヒラタカゲロウ類も見られ、きれいな水と言えるでしょう


珍しい魚も獲れました


これでこの日の調査は終わりですお疲れ様でした

複数の地点を比較検討
 生徒たちは、淀川本流、桂川と淀川の合流地点、桂川中流部とそれぞれ条件の違う地点で調査しました。どのような違いを見つけてくれたでしょうか。上流から下流への変化を体験とデータでしっかりと把握して欲しいと思います。
 後日、生徒たちは、木津川と宇治川の調査も行いました。
 複数の地点の比較検討により、淀川流域の実態が地図だけでなく、その水質と生態とともに理解することにつながって行くものと思います。

※1 ワンドとは、淀川本流とつながっているか、水が増えたときにつながる、河川敷の小さな池のことです。川の水や雨水がたまってできた「たまり」と区別してワンドと呼ばれています。ほとんど流れがないため、さまざまな希少な生き物や植物が見られます。全体で約45のワンドがありますが、環境が少しずつ異なるため、一つひとつが個性的な生き物の小宇宙となっています。
 明治の初め頃、大阪湾から淀川を通って京都まで蒸気船が通ることができるように、淀川の水の深さを保ち、流れる速さをおさえることを目的として「水制(すいせい)」というものがつくられました。この水制に囲まれたところに土や砂がたまり、その上に水際をこのむ木や草が茂り、現在のワンドができあがりました。(淀川資料館HPより)
※2 江戸時代、淀川の枚方あたりでは三十石船の船客に、小舟を使って軽食などを販売していました。小舟は「くらわんか舟」と呼ばれ、淀川の風物詩として親しまれていました。くらわんか茶碗はそこで使われていた茶碗で高台を大きくし、安定感のある形をしています。
※3 須恵器(すえき)とは、青く硬く焼き締まった土器で、古墳時代の中頃(5世紀前半)に朝鮮半島から伝わった焼成技術をもって焼いた焼き物のことをいいます。
団体名|NPO法人関西ナショナル・トラスト協会(えぬぴーおーほうじんかんさい・なしょなるとらすときょうかい・大阪市西区)
テーマ|水生生物を指標とした淀川水系の水質調査活動
目 的|淀川流域の高校生を対象に、水質指標生物を使った水質判定の実体験を通して、淀川の河川環境と水質についての総合的な理解を深める
概 要|淀川河口域から中流域、上流三川(桂川・宇治川・木津川)について学習会やフィールド調査を実施し、淀川水系の水質環境や河川生態系の特性について正しく認識する。



 
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